お陰様で、ラグタイムは1月21日に創業25周年を迎えました。
思い起こせばこの25年間、お客様をはじめ、様々な方や食材との多くの出会いと別れがありました。
ご愛顧、ご指導いただきました方々に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。
尊敬する老舗のご主人の著書の中に『先代に教えてもらった通りに作ったら、味が落ちたと言われ、自分が美味しいと思う通りに作ったらさすが老舗の味だと言われた。』というお話があります。エアコンの普及が進み、人々の求める塩分濃度が変化する等、時代の風潮や嗜好は常に推移し、加えて食材そのものや調味料も日進月歩で進化を続け、変わっていきます。質の高い料理を作り続けていく上で、継承すべきはレシピ自体ではなく、それを生み出した理念なのだ、とのお考えは非常に印象深く、心に焼き付いております。
私共のメイン食材である、黒毛和牛のA5自体も刻々と変化しているようです。
1/25付の日経新聞が報じた所によりますと、2019年通年の全和牛の中でA5の占める割合は46%、18年の実績より5%、5年前と比較すると19%も増加しています。私共がA5の和牛を看板に創業した当初は、手元に確認できる記録はありませんが、もっと希少なイメージでした。今や和牛の全流通量の約半分がA5になってしまったということです。
『味』や『おいしさ』というのは、相対評価と考えます。個人的な好みもあり、非常に曖昧なので、絶対評価である格付けには、そもそもそぐわないものです。したがって格付けの評価規準は『見た目』にならざるを得ません。A5の急増は『見た目』基準のA5格付けを作る技術が飛躍的に進歩し(味は置き去りにして)、かつ消費者の嗜好がA5に偏り、生産者側も主観的に味の良い牛肉を生産するよりも、高い単価が担保されるA5を生産し、収入増を目指しているということが背景にあるようです。生産者の立場からすれば、こうした動きは当然のことだと思われます。
こうした現状の中、お客様により美味しい和牛をお出しするために、20年以上のお付き合いのある、信頼できる目利きと技術を持つ仕入れ業者さんに、従来の『黒毛和種』『雌』『A5』に加え、『30ヶ月齢以上』の条件を加え、良質な和牛の供給をお願いしております。また私共でも、保存方法、切り方、焼き方、提供方法等、少しずつではありますが、新しい手法を取り入れながら、試行錯誤を繰り返しております。
時代も食材も調味料も自分達自身も、日々刻々と変化していく中で、情報収集や研究を重ね、自分達の理念と味覚を信じ、変化には柔軟に対応しながら小さなマイナーチェンジを繰り返し、仕事に励んでまいる所存です。
今後ともご愛顧の程、よろしくお願い申し上げます。