武川米でお世話になっている生産者の五味利直さんが、
第24回やまなし県民文化祭文学部門の児童文学県民文化祭賞を受賞されました。
おめでとうございます!
五味さんの受賞作「足らずの三太」をこちらのブログにて、連載でご紹介させていただきます。
生産者である五味さんが直接書き下ろされたこちらの作品を読んだ上で味わうお米は格別です!
三太は、山梨県の北の果て、駒城村に生まれました。三番目の男の子で三太と名付けられ、今年で 十一歳になります。
学校の成績は悪くいつもピリ で、生徒たちは、三太のことを「足らずの三大」と呼んでいます。 教室では、先生の話はほとんど 聞いておらず、いつも窓の外の空の雲や、飛ぶ鳥などを眺めながら ぼんやりしているのです。
学校が終わると、他の生徒はバ スで帰るのですが、三太は一度もバスを利用したことがありませ ん。
定期券があっても歩いて家に帰 ります。三太には寄って行く所があるからです。その場所は、三太の家で耕作している田んぼです。
春も夏も、そして秋も冬も三太 は毎日田んぼに寄って、田の生き物をジッと見つめています。
三太が田んぼに通うようになっ たのは、五歳を過ぎた頃からで、 春の田植えが始まってからいつも田んぼの畔に腰かけて、ジッと田の中の生き物を見つめているので す。
特にカエルの子供のオタマジャ クシが田にあらわれると、三太は 目の色を変えてジッと見つめ続けているのです。
小学校に入学したばかりのある日、
「三太が、学校に来ていない」
と、担任の先生から電話があり ました。両親がもしかしたらと思って、田んぼに行ったところ、三太は思ったとおり、ランドセルを脇に置いて田の畔に腰掛け、ジッ と田の中を見つめているのでした。
母親が、
「三太、何しているの、学校は?」
と尋ねると、三太は
「あっ、忘れてた」
母親はあきれるばかりです。
三太を送って学校に行き、先生にあやまりました。
オタマジャクシが成長し、カエルに変身する季節になると、夕方になっても三太は家に帰ってきません。
両親は心配になり田んぼに捜しに行くと、夕暮れで見にくくなった田んぼを見つめる三太がいました。
「暗くなってきて、見えないでし ょう」と三太に言うと、
「ううん、まだ見えるよ。オタマジャクシのシッポがなくなって、 カエルになったよ」
不思議そうに両親の顔を見つめ 太る三太がいました。
三太の後ろには、ホタルが三匹飛んでいました。まるでホタル達 は、三太と遊んでいるようにグルグルと三太のまわりを楽しそうに飛んでいるのでした。
ある日、三太が、
「行ってきます。」
と言って家からバケツとオタマ を持って出ていくので、
「三太、どこに行くの?」
と母親が聞くと、
「田んぼに寄っていくよ」
そう答えるのです。
母親は、バケツとオタマを持って田んぼに行く理由が分からず、 三太の後について行きました。
三太は、いつも行く自分の田んぼには行かず、水が干してあるよその田んぼに行くのでした。
この地方では、六月から七月にかけて、苗の成長を促し根の張りを強くするために、田の水を全部抜いて太陽にさらす「田干し」をどこの農家も行っていました。
三太は、その「田干し」をしている田んぼに行き、まだ少しだけ水が残っている田の水口や水溜まりに行って、田んぼから何かをすくって、バケツに入れていました。
つづく
